公園の猫 18

風呂から出た夫は動揺したS子と違い、特に変わったところもなく手早く食事を済ませるとパソコンの前に戻り、再びキーボードを打つ乾いた音をたて始めました。

その場に一緒にいるのも不自然で、あまり無理しないようにと夫に声を掛け、S子は先に休むことにしました。

ベッドで横になってみたものの、名刺入れの事が頭から離れず、スマホを手に取りさっき撮影した画像をぼんやり眺めていました。

夫に何気なく聞けば良かったのですが、S子は倉井の家に通ううち、公園に来るようになった理由は夫との関係が原因だというのを少し話たこともありました。もし夫が倉井と繋がりがあったとしたなら、夫は倉井からS子の話を聞いているのかも知れない。考えてみても、夫本人に聞かないと何もわからないことで、明日にでもタイミングをみて聞いてみようと思いました。

夫はその夜、日付が変わる頃までパソコンで作業を続けていたようでした。何度か夜中に目が覚めたS子が、ベッドサイドの時計を最後に見たのが2時過ぎでした。夫はすでに隣で背を向け寝息を立てていました。

眠りの浅いS子に気を使ったのか、入ってきたことにまったく気付きませんでした。

そういえば夫は、最近自分を全く求めなくなっていた。眠りにつく意識の中で最後にそんなことをS子は考えていました。