2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

公園の猫 21

倉井との久しぶりのお茶も、自分のせいで妙な雰囲気になっているとS子も自覚していました。 普段よく喋る倉井も口数が少なくなり、S子も夫のことを話してしまうと何も喋る気がしなくなりました。 半ば逃げるようにS子は、(そろそろ家に帰らないと)と独り言の…

公園の猫 20

わざとらしくも思える驚き様と、笑顔で話し掛けてくる倉井に苛立ちを覚えながらも、S子は笑顔で答えました。そして倉井はいつものように自宅でお茶でも、とS子を誘いました。 久しぶりに倉井の家の居間に上がり、S子は周囲を見渡しました。倉井のハンドメイ…

公園の猫 19

それから夫は忙しいようで帰宅も遅く、疲れきっているように見えました。 名刺入れの事を聞くのも気が引けて、少し落ち着いてからにしようとS子は思っていました。 珍しく夫は休日も仕事のようで、その土曜日も朝早くから家を出ました。息子をクラブに送った…

公園の猫 18

風呂から出た夫は動揺したS子と違い、特に変わったところもなく手早く食事を済ませるとパソコンの前に戻り、再びキーボードを打つ乾いた音をたて始めました。 その場に一緒にいるのも不自然で、あまり無理しないようにと夫に声を掛け、S子は先に休むことにし…

公園の猫 17

皮の名刺入れとフクロウの焼き印。 何故夫がこれを持っているのか… たまたまなのか、それとも倉井と知り合いなのか、知り合いだとするとS子に言わなかったのは何故なのか? 可愛らしくデフォルメしたフクロウの顔は、考え込む自分を馬鹿にしているようにS子…