公園の猫 15

異常とも思えた夫の性欲が治まってくると、S子も公園に寄るのを徐々に少なくしました。

急に変えるのも不自然だし、倉井と全く会わなくなるというのも失礼な気がしましたが、これ以上親しくなるのはどうしても違和感がありました。通ううち、慣れてきたところもありましたが、もう一歩踏み込んだ親しい付き合いをするのを自然と勘が働いて無意識にブレーキをかけていました。倉井の何がそう感じさせるのかは具体的に説明できないのですが、動物が危険を回避するような感覚でした。

たまにしか会わなくなった倉井は、寂しいけどお子さんがいるから忙しくなるよね、と理解を示してくれ、S子もその意見に便乗し適当な理由をつけてあまり来られなくなったことを残念がって伝えました。その時、気のせいかも知れませんが倉井が何か呟いたように唇が動いた気がしました。S子が視線を向けた時には、言葉の余韻が漂って徐々に消えていくように見えました。

しばらくその余韻が重くのし掛かるようで、二人とも無言になりました。重い雰囲気になるのを避けようと周囲を見渡したS子は、倉井のハンドメイド作品が模様替えしているのに気付きました。そこには革製品が追加され、皮のキーホルダーや小物入れ、名刺入れのようなものが並んで、作品には必ず倉井のデザインしたフクロウが、焼き印してありました。

S子がその事を尋ねるより一瞬早く、倉井が話始めました。倉井の話は結局S子が帰る時間まで続き、作品については聞けずじまいで終わりました。

倉井の自宅を後にしながら、倉井があえてその話題を避けるように話始めたような気がしていました。やはり何か倉井には信用しきれないところがあるとS子は感じました。そしてそういう勘はこれまで、間違ってないことが多いことも分かっていました。

 

ー続くー