公園の猫 23

S子はやけにあっさりと退職しました。彼女の行動は今までの仕事ぶりや私の知っている普段の姿からはまるでかけ離れていました。スーっと突然目の前から居なくなったようでショックはありましたが、呆気にとられたという方が大きかったと思います。

おかげでしばらくは仕事が混乱しました。パートナーが当日のシフトで日替わりとなったこともあり作業はストレスを感じる間もないくらいの目まぐるしさでした。そんな日々が一か月近く続いて、やっと私のパートナーが固定されました。噂話好きなグループの一人で、私より一つ年上のK美でした。

K美とはお互いに長く勤めていたものの直接会話したことは無かったと思います。私もおそらくK美も、最初はお互いに噛み合わないと思い込んでいたところがありましたが、時間が経つにつれ意外に仕事がやり易いと感じるようになりました。話好きで普段から口数が多いK美でしたが注意深いところがあり、お陰で何度か私がミスしそうになったのを事前に防ぐことができました。代わりに仕事ががさつなK美の後始末を私がすることもあり、お互いに指摘して険悪にならずに、フォローし合うことでバランスが保てていました。

そんなK美でしたがやはり噂話が好きで、聞き下手な私が相手だろうと構くことなく休み時間になると話掛けてきました。ある日いつものようにK美が、私に聞いて欲しいと前置きして話始めました。

聞いているつもりで適当な相槌を打っていたのを見透かされたかなと少し焦りましたが、どうやらそうではないようでした。

K美が話始めたのはS子の事でした。