公園の猫 17

皮の名刺入れとフクロウの焼き印。

何故夫がこれを持っているのか…

たまたまなのか、それとも倉井と知り合いなのか、知り合いだとするとS子に言わなかったのは何故なのか?

可愛らしくデフォルメしたフクロウの顔は、考え込む自分を馬鹿にしているようにS子には感じられました。

中を確認すると夫自身の名刺が数枚入っているだけで、真新しい皮の、まだ硬い感触から使い始めて間もないように思えました。

夫が名刺入れを変えたのを自分に言わないでいる。別に普通の事のようにも思えるし、知られたくない事があるから言わなかった、と勘繰ればキリがありませんが、倉井の家で見たこのフクロウを自分の家の居間で見るのは場違いな気がしてなりませんでした。

風呂から出て脱衣室入る音がしました。S子はとりあえず上着をクローゼットに仕舞い、名刺入れは何故か自分でも解りませんがとっさにスマホのカメラで撮影して、元のポケットへと戻しておきました。

まだ考えが定まらない内に夫が出てきたのでとりあえず夕飯を温め、テーブルに並べました。ちょうど同じタイミングで夫も脱衣室から出てきました。