公園の猫 2

前回からの話の続きです.

以下、彼女のことをS子とします。

 

私と組んでいたベテランが定年退職し、職安に出した求人がきっかけで入社したのがS子でした。

当然、私と組むことになりました。

今まで組んでいたベテランは口が悪いところや何度も同じ話をしてうんざりするところはありましたが、一回り以上年上であるのと、仕事内容を熟知していることもあり私が彼女に合わせるだけで業務を円滑に進めることができていました。

S子は採用時の条件であった仕事に必要な資格は持っていましたが、実務経験がありませんでした。今までとは違い私がリードしながら良好な人間関係も築かなければ、と考えると気が重くなっていました。

しかしS子はそんな私の心配を見透かしているかのように、驚くほど物覚えが良く、一度説明したことは間違うことなく完璧に業務をこなしました。感心してS子にそのことを言うと「物覚えだけはいいんですよね、考えるのは苦手だけど」と笑顔で答えます。微笑むと弓なりになる目に特徴があり、昔昼ドラで活躍した女優によく似ていました。

派手な顔立ちではないですが、優しそうで上品な笑顔がチャーミングで若い頃はモテただろうな、と勝手に私は想像したりしていました。

 年は私より三つ下でした。実年齢より若く見え、いつもさりげなく生地の良さそうな服を着て、しかもあの欧州車で通勤していたので、休憩時間に職場の噂話好きなおばさん達から冷やかし半分の図々しい質問を受けていました。

私がそのうち自然に話せればと思い、すぐに聞かなかったことが、噂話好きおばさん二人によってS子が入社した初日にはもう分かってしまいました。

S子は既婚者で、旦那は地元では有名な企業に勤めていました。子供は高校生の女の子と、小学五年生の男の子の二人だそうです。あの欧州車は旦那の趣味で自宅にはミニバンと二台所有していて、大きなミニバンは運転しづらいためあの欧州車で通勤しているとの事でした。

S子の状況や話の内容からは、噂話好きおばさん二人にとって特に興味を引く話が無かったようで、聞いて適当な相槌を打つと直ぐに自分達だけで誰かの噂話に没頭しはじめました。いつものことでしたが半ば呆れながらS子の顔色を窺うと、気にしていない風でS子は休憩所の小さなテレビを見つめていました。

 

ー続くー