公園の猫

 自宅でぼんやりと過ごしていた休日の昼間、何気なく見ていたテレビに洒落た欧州車が映っていました。

クラシックなデザインとカラーは、日本車にはない落ち着きとセンスを感じさせます。

ボーッとした頭の中にふと、一人の女性が浮かびました。一瞬何故彼女の事が頭に浮かぶのかと考えましたが、その欧州車に乗っていたのが彼女だったのです。

その彼女と私は以前同じ職場の同僚でした。

特殊な専門職である仕事柄、二人チームというのが常という職場でした。

三年前まで私は彼女と二人チームで仕事をこなしていました。どちらかというと私は他人と打ち解けるのが苦手で、仕事仲間とそんなにプライベートの話をする方ではありません。彼女は私と違って誰とでも屈託なく話していましたが、どこか一線を引いているように感じました。そしてそれを他人に感じさせないようにするためか、当り障りのない話をうまく盛り上げるのに長けた人でした。

テレビに映る欧州車は、その彼女の車でした。

派手さはないが目立つ車のため、他の同僚に車の話を持ち掛けられる事もありましたが、その度彼女は少し相手に合わせた後、気付かないほど上手く別の話題へ誘導していました。

 そんな彼女だったからこそ私は彼女と二人でチームを続けられたのかも知れません。彼女が入社してから約五年間、一度も揉めることなくおそらくお互いに、少なくとも私はストレスを感じることなく仕事ができていました。

これから記するのは、そんな彼女から唯一聞いたプライベートな話です。

私にはとても印象深く不思議な話だったので、彼女のことを思い出すたびその話が頭に浮かびます。

もちろん個人情報保護のためと、話の詳細の記憶が曖昧なのこともありフィクションを入れた部分も多々あります。

ー続くー