公園の猫 12

土曜日になり、S子は倉井の家に招待されました。

斜面を削って区画整理した住宅街の、上りきったところが倉井の自宅でした。白とピンクを基調にした大きな家で、庭も広く短く整った触り心地の良さそうな芝生が目を引きました。

倉井について門から庭に入り弾力のある芝生を歩くと、玄関よりも手前にオープンデッキがありました。居間とつながっていて、玄関からではなく居間の大きな窓から倉井は自宅に上がりました。倉井に言われS子も窓から居間へ入るとソファーに座って待っていてと倉井は言いました。

お茶を入れに行った倉井を待ちながら、S子は周りを見渡しました。いくつものテーブルの上に、ネックレスやピアスなどのアクセサリーや小物類、アメジストの原石が所狭しと並んで、透明のケースに入ったアンティークの玩具などは天井に迫りそうな高さに積み上げられており、明らかに過剰に、物を詰め込みすぎた居間でした。

窓の向こう、家の裏側には軽のワゴン車が見え、S子はソファーから立ち上がり窓の外を覗き込みました。

軽のワゴン車は随分以前からそのまま放置されているようでした。リアガラスには緑色のコケが広がっていて、車内にもカラーボックスのような家具や工具箱のようなものがありました。ホイルは錆びてタイヤの所には赤茶けたシミが滲み出ています。車と家の壁の間にはアウトドア用のテーブルや壊れた家具などが放置されていていました。

普段の会話から倉井のことをハンドメイド作品を趣味で作っている上品で裕福な主婦だと思っていました。家の大きさや普段着ているセンスの良い上品な生地の服、さりげなく身に付けたアクセサリーを見るとそれも間違ってはいないと思います。ただ家の表側と裏側のギャップを見て雑然とした居間にいると騙されているような居心地の悪さを感じました。

必要以上に警戒しすぎなのかも知れない。それとも何か妙に勘が働いているのか。偶然にも公園で知り合った人の自宅に招かれ、ここにいることが今になって不思議に思えました。浅くソファーに腰掛けリラックスできないままS子は探るように周りを見渡すと、雑然としたテーブルの上にあのフクロウを象ったアクセサリーの一角がありました。

その愛らしく惚けた表情はS子の不安を和らげようと微笑みかけているようでした。