公園の猫 4

翌日の朝、出勤したS子の鼻と頬に金たわしで擦ったような痛々しい傷痕がありました。本人いわく顔の擦り傷よりも、捻った足首の方が痛むとの事でした。

知り合いの家の玄関を出たところで転んだ、とS子は説明し私や噂話好きおばさん達が同情すると照れたような苦笑いを浮かべていました。

捻った足首を庇うように歩くS子に声を掛けると、照れながら大丈夫だと答えました。転んだことが少し恥ずかしいんだろうなと私は思いました。

昼休みを終え、午後イチの仕事に取り掛かりながら、妙な違和感を覚えました。ある計器を作動させていると動いてはいるものの負荷が全く掛からず、何度か試して確認するとどうやら接続したパーツに間違いがあり、最初からやり直すことになりました。

S子にその事を告げると、今まで見たことのないような怪訝な表情を浮かべました。確認すると自分の接続ミスだとS子は気付きました。

S子がこんな大掛かりなミスをするのは初めてで驚きでしたが、急がないと間に合わないので、私はやり直し作業に集中していました。

気付くと本来使うべきパーツを取りに行ったS子がまだ帰ってきていません。そんな時間が掛かるはずはなく、私はS子が取りに行った方へ向かいました。そしてトイレの前を通り過ぎた時、視界の隅にトイレの手洗い場で顔を洗っているS子を見つけました。

顔を拭いたS子と目が合いました。

涙を洗い流したS子の目は、赤く充血していました。

 

ー続くー