公園の猫 7

(下の子が野球クラブに行くようになってから…なんだよね。それから毎週するようになって…)

店内には私達以外に初老の女性のグループが四人居て、話に夢中のようで時折四人が一斉に笑う声も聞こえました。おかげで私達も気にすることなく会話できました。

(旦那はもう50になるし、今まで月に一度も無かったのに、急に性欲が湧いてくるなんて)

私は同情するように頷きながら、S子の話に聞き入っていました。

(無口な旦那だけど家庭的で誰に対しても親切な人なのよね。夫としては今まで文句もないくらいだったけど、毎週の行為が私、苦痛になってきて…しかも半ば強引にするときもあるの。そういう時は今までの旦那とはまるで別人になったみたいで)

初老の女性グループは相変わらず会話が盛り上がっています。S子が紅茶を飲み、私もコーヒーを飲んで最後に一切れ残ったタルトを口に運びました。

(強引なのはほんと嫌になるよね。旦那さんにそのことは言ってるの?)

(うん。強引にするのは辛いからやめてって。その時は分かったって言うけど、本人にしたらちゃんと手順を踏んでしてるつもりだから強引じゃないと思ってるのか…私も毎週するのは嫌だ、って何となく言いにくくて。拒否したら旦那が少し可哀想な気もするし。でも私はそんな頻繁に行為したくはないし、どうしたらいいのか分からなくなって)

無口で家庭的で親切な旦那。そして地元では有名なインフラ企業に勤めているので十分な収入もあるはずです。そんな旦那を拒否するのは少し可哀想、というのも分かる気がします。

 (下の子を野球クラブに送った帰りに、ふと思いついて帰り道から少し外れたところにある海浜公園の駐車場に寄ってみたの。このまま帰るとまた旦那とすることになるから、クラブで打ち合わせしてたことにすればいいかなって)

S子のいう場所は、国道沿いにある海浜公園の駐車場のことでした。大型トラックを何台も停めるスペースがあり、一般車はざっと50台は停められそうな広い駐車場です。

(停車してスマホを弄りながら時間を潰してたんだけど、何か外で動くのが見えたの。覗くと猫が私を見上げてたの、何かくれって顔しながら)

思い立ってS子は駐車場を出ると、近くのコンビニに入りイカのおつまみと紅茶を買っって再び猫が居たところに戻りました。猫は居なくなっていましたが、すぐにまた出てきてS子を物欲しそうに見上げたそうです。

 

ー続くー